イサム塗料について
2027年に創業100周年を迎えます。
“企業は人なり”といわれるとおり、社名は創業者北村勇(いさむ)の名に由来し、”良品質な塗料を通して広く社会に貢献する”という創業者の信条を経営理念としています。
創業以来、堅実かつ積極的な経営に努め、自動車補修用塗料を主力とし、工業用塗料・建築用塗料・エアーゾール製品などさまざまな分野で時代の先を行く特徴的な製品の開発を続けるユニークな企業として着実に歩んでいます。
製品は2000年に一新した滋賀工場(滋賀県草津市)において集中生産し、自社の物流拠点と併せて全国を網羅する特約店のネットワークにより万全の物流・サービス体制を確立しており、需要家の皆様のご要望にお応えしています。
また、塗料製品に加え、お客様とのコミュニケーションをベースに、塗料・塗色情報のみならず塗装全般のソフト開発・教育研修などの時代のニーズに応じたサービスの提供にも注力するなど、きめ細やかな事業活動を展開しています。
車両用塗料部門
独創的なアイデアによる製品開発
イサムの自動車塗料部門への進出は、1949年に製造販売された「アートテックス」に始まります。以来、世界初のアクリルウレタン樹脂塗料「ハイアート」、速乾型スーパーアクリルウレタン樹脂塗料「ユニアトロン」、アクリルウレタン樹脂塗料「AU21」、ダブルキュアーウレタン樹脂塗料「ウレタ88」、高反応性ポリエステル樹脂塗料「ミラノ2K」など、時代の最先端を行く独創的な製品の開発に大きな成果をあげてきました。
1992年には、世界初の特殊活性結合反応塗料として、一液で二液の性能を発揮する「ミラノ2KリアクターMシリーズ」を製品化し、2000年には、国内塗料メーカーでは初めての本格的な水性自動車補修用塗料としてハイパー水系塗料「AXUZ(アクアス)」を製品化しました。また低VOC環境対応型1液ベースコート「アクロベース」をはじめ、環境対応型1液ベースコート「ハイアートNext」、大型車両向け2液ウレタン樹脂塗料「ハイアートCBエコ」を順次市場に投入し、自動車補修用塗料としてのブランド力を高めています。今後も時代と共に変化する自動車業界に新しい塗料を提案し続けます。
水性1液型ベースコート
用途:自動車補修用
溶剤1液型ベースコート
用途:自動車補修用
溶剤1液型ベースコート
用途:自動車補修用
溶剤2液型ウレタン樹脂塗料
用途:大型車両、鉄道車両、建設機械、各種金属製品等
CCM
(コンピューター・カラーマッチング)
調色管理測色システム
建築用塗料部門
ニッチ市場に向けた機能性塗料の開発
イサムは1970年、日本初のウレタンゴム外壁防水材「イサムタイルUG」を製造販売しました。続いて1973年には、より施工性に優れるアクリルゴム外壁防水材「アトロンエラストマー」を開発、その後もアクリルシリコン樹脂塗料「ネオシリカ」シリーズ、「イサムフロアー」シリーズ、など様々な用途に応じた高性能な製品を市場に送り出しています。
また付加価値を持つ機能性塗料の開発にも注力しており、タイル壁面改修「タイルガード工法」、タイル床面の滑り止め「スキッドガードシリーズ」、室内環境を清浄にして抗ウイルス効果のある内装用光触媒塗料「エアフレッシュ」などを発売しています。これからも市場の要望にお応えするとともに、さらに新しい市場を創造する機能性塗料を提案し続けます。
塗料でできるウィルス対策!
ハイブリッド型内装用光触媒塗料
磁器タイル仕様の床の滑り止め
汎用・工業用塗料部門
市場ニーズにベストマッチした製品開発
創業時から蓄積されたイサムのノウハウが、さまざまな分野でご使用いただいている製品開発に役立っています。そのひとつにあげられるのが各業種の生産ライン。塗装条件や目的とする機能によって、必要とされる塗料は異なります。イサムは顧客ニーズを引き出し、ニッチ市場においても必要とされる製品開発やサービス提案に繋げています。また、各種法令・規制に対応した環境対応型塗料の提案にも注力しています。
溶剤1液型焼付ウレタン塗料
用途:産業機械、工作機械、電気機器、
各種金属製品
溶剤2液型ウレタン樹脂塗料
用途:工作機械、自動販売機等、各種金属製品
水性1液型アクリル樹脂塗料
用途:建設機械、重機等、各種金属製品
生産体制について
高品質な製品を安定供給
製品を生産している滋賀工場は、琵琶湖畔の南東の丘陵地に位置し、周辺には3つの大学や近代美術館、図書館、病院等の教育研究施設や文化施設が整備された滋賀県最大の「びわこ文化ゾーン」の一角に、広大で緑豊かな敷地に、優れた生産設備と機能を備え、研究所を併設したイサムの生産拠点です。
イサムの製品はこの工場で集中生産を行っており、生産の効率化を図るとともに、安定した品質の製品を全国に届けています。
工場では2000年にISO9001・ISO14001を認証取得し、原料受入れ検査から製品検査まで品質にこだわった生産活動に取り組んでいます。製造設備では原料の自動液送供給や自動充填機・搬送ロボット等を利用した省力化設備を設置しています。また、生産設備の中核をなすのは「移動槽式バッチ生産システム」で、これは少量多品種の製品を効率的に生産するために有効な設備で、工場内のレールに沿ってタンク自体が移動して原料投入や製品撹拌、缶詰充填を自動で行うことで、人手を介さない自動生産ラインとなっています。
また、顧客の様々なご要望に対応するための少量多品種製造については、顔料分散液の共用化やベースクリヤー方式を可能な限り取り入れ、作業工程の効率化により十分な対応ができる体制を整えています。
さらに、生産・販売・物流・会計などの様々な業務システムを統合したERPを導入し、情報の一元化により効率の良い管理体制を構築しています。
工場の生産品目は8,000余種で、生産能力は年間18,000トン(月間1,500トン)となっています。
生産体制
調色センターについて
色相の精度と短納期を追求
調色センターでは、車両用・建築用・工業用塗料に関して、お客様から指定された塗色に合わせる調色業務を行っています。調色業務は、以前の熟練者の経験と勘で行われることが多かった作業から、現在は調色管理測色システム「彩選短スマート」、カラーマッチングシステム「AUCOLOR-PN10」などの自動調色機器を活用した作業を取り入れ、作業時間の短縮や配合データの管理を実施し、調色業務の効率化と納期短縮を実現しています。 さらに、調色判定検査においても目視および色差管理を行い、優れた調色精度の維持向上に注力しています。
調色は調色センター以外にも各支店で可能な体制としています。少量の調色を各支店、まとまった数量を滋賀工場の調色センターで行うことで、設備の合理的な配置と作業の適正化を図っており、調色センターの生産量は年間720トン(月間60トン)となっています。
また、調色技術者の一層の技術力向上を目的として、色彩技術資格取得の推進や塗装技術研修講座への参加などを行い、さらなる育成に取り組んでいます。
調色センター(外観)
調色作業風景①
調色作業風景②
教育・支援体制
(日本塗装技術センター)
製・販・装のさらなる一体化を目指して
自動車の進化は著しいものがあり、ボディへの新素材の採用や新顔料および高機能なクリヤーの採用などの多様化に伴い、これらの補修には高度で専門的な技術が必要となっています。また、環境対応規制も年々厳しくなる傾向にあり、塗料や廃棄物などの危険物にはしっかりとした知識を持って対応しなくてはならない時代になっています。
当社では、1972年に他社に先駆け、特約店やユーザーの塗装技術者の教育・育成機関として、「日本塗装技術センター」を各地に設置し、塗装技術者の新人育成からベテラン技術者のさらなるレベルアップを図るため、目的別講座を多数用意し、付加価値の高い塗装技術を習得する支援を行い、製・販・装が一体となり、ともに向上できるよう取り組んでいます。
体制
西日本会場、東日本会場、中部会場、九州会場、仙台会場の5会場を設置し、全国のユーザーに対応できる体制となっています。各会場の実習場に環境対応型のプッシュ-プル式自動車塗装ブースを設置し、講義ルームを併設して、塗装実習と座学を同時に研修できます。
設備
近年は環境意識の高まりから水性塗料に関する講座の受講が増えています。水性塗料は溶剤塗料以上に塗装時の気温と湿度の管理が重要であるため、西日本会場(滋賀県草津市)では温度・湿度調整可能な最新鋭の塗装ブースを導入しています。
これによりあらゆる気象条件での塗装検証を行うことができ、より細やかなニーズに対応できるようになりました。他の会場においても随時設備の更新を行い、常に新しい塗料・塗装・工法に対応する教育設備の充実を進めています。
その他には、コンピュータ調色システムの機器、各種メーカーのスプレーガン、遠赤・中波・短波の各波長の赤外線乾燥機や研磨ツールなどを完備し、鈑金から調色、磨き仕上げまでトータルでの自動車補修塗装の研修に対応しています。
最新型の温度湿度調整自動車塗装ブース
環境対応の水性塗料と溶剤型塗料を完備
カラーをテーマとした休憩スペース
快適な環境の座学研修ルーム
塗装研修風景①
塗装研修風景②
研究開発
独創的な製品開発の推進
主力の自動車補修用塗料をはじめ、各種工業用塗料、汎用塗料、建築用塗料と幅広い塗料の開発を行っています。メーカーとして必要不可欠な技術開発力の維持・向上のため、充実した試験・検査機器を導入し、新製品の研究開発、従来製品の改良研究に取り組むとともに、塗料に関する基礎研究・応用研究を中長期的な展望に立ち推進しています。
製品開発においては、市場のニーズを徹底的に分析し、必要とされる機能や品質のための技術課題や環境保護などの社会的課題に応えるため、広範な分析・設計・試作・物性試験を繰り返し、安定した性能を確認します。特に塗装作業性に関しては、社内の塗装インストラクター評価やユーザーテストを積み重ねることにより、ユーザーに求められる製品としての完成度を高めています。こうしたユーザーニーズを満たすための地道な研究の成果は、新製品の開発や従来製品の品質向上、環境対応をはじめとする新しい価値創造、新規市場分野の開拓に活かされています。
また、小回りが利き、柔軟性のある開発体制をとっており、情報伝達が早く、意思決定から実現までが早いという特徴を持っています。それにより市場に求められる製品をタイムリーに提供できるよう取り組んでいます。
近年では、環境や健康に配慮した製品開発は必須となっており、有害物質を含まない原材料を使用し、塗装時および乾燥過程で発生する揮発性有機化合物(VOC)の削減を考慮した水系塗料の開発に注力しています。
また、塗料はそれ自体が最終製品ではなく、塗装された塗料が塗膜となって被塗物の保護・美観を向上させますので、塗装作業のしやすさということも重要な要素となります。あわせて塗装時に塗装面に付着せず飛散する塗料を減少させることは、環境保全や経済性の面からも重要です。そうしたことから塗装は塗料の機能を発揮するために大きな役割を担っています。そのため当社では、製品の機能を十分に発揮させる、作業性を改善するなどの塗装システムや塗装技術の開発にも注力し、積極的に提案を行っています。
創業以来さまざまな独創的な製品開発を生み出してきたイサムの技術力は、さらに進化を続けています。
超微粒子顔料分散機(ラボ用)
高発色原色の高効率分散機
色差計
塗膜の色相、着色力を数値評価
ダイノメーター
塗料の表面張力を計測し、被塗物への
塗りやすさを評価
剛体振り子試験機
塗膜の架橋密度、硬化具合の測定
スーパーUVテスター
アクリルシリコンなど高耐久性塗料の耐候性を
短期間で計測
塩水噴霧試験機①
防錆性能の試験
塩水噴霧試験機②
(内部)
低温恒温試験機
温湿度サイクル試験により様々な環境条件に
対応
FT-IR分光光度計
塗膜他有機物の成分分析
エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)
塗膜成分他、不純物中の金属成分を分析
ガスクロメーター
シンナーの成分を分析
UV分光光度計
シックハウス物質の放散量を測定
テーパー摩耗試験機
床用塗料等の耐摩耗性を測定
JIS、ISOに準拠した促進耐候性試験機①
サンシャインアーク式(奥)/キセノンランプ式(手前)
キセノンランプ式②
(内部)
オートグラフ(引張試験機)
塗膜の密着強度、破断強度、伸び率等を測定
品質管理体制
安定した製品を供給するために
イサム製品の品質安定化はすべて滋賀工場の品質管理課でコントロールしています。常に同じ品質の製品を提供できるよう、最新の検査機器による管理と経験豊かな検査員による監視を行っています。
イサム製品は自動車補修用塗料の販売比率が高く、調色管理測色システム「彩選短スマート」などの計量による調色を安心して使用していただくためには高精度の色相管理が重要です。
従来より数値管理塗装マニュアル「PACシステム」、実車配合データ「カラー工房」における色相管理もカラーコンピュータを活用した品質管理を行っていますが、より一層の精度向上を追求し、安定した色相の製品の提供に努めています。
化学物質管理について
イサムは環境負荷の少ない製品を開発・販売するため、原材料等について「グリーン調達基準」を定め、取引先の協力のもと、グリーン調達を行っています。
NITE-CHRIPなどの公的機関や原材料メーカーからの化学物質情報をもとに、GHS(国連化学物質の分類および表示に関する世界調和システム)に従って、すべての製品のSDS(安全データシート)を随時更新し、最新版をユーザーおよび特約店に提供しています。
また、輸送時の安全確保をはかるため製品ラベルには国連番号・指針番号を記載することによる容器イエローカード(ラベル方式)を採用し、万一の物流事故発生の場合もラベルから応急措置方法がわかるよう情報を提供しています。
自動フィルムアプリケーター
均質な評価用塗膜を作成する
ガスクロマトグラフィー
シンナーの組成分析を行う
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)
分子量分布測定機
合成樹脂の分子量分布を測定し、原料品質を確認する
カールフィッシャー水分計
溶剤に含まれている水分を測定
グロスメーター(光沢計)
塗膜の光沢を測定する
ヘイズメーター(濁度計)
クリヤー塗料の透明性を測定する
電位差自動滴定装置
イソシネアート系硬化剤の有効成分濃度を測定する
エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)
原料や製品に有害元素の混入がないかを調べる
フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)
物質に赤外線を当てたとき、分子固有の波長の光を吸収することを利用し、原料品質を確認する
カラーセンター
環境配慮型塗料の普及促進、塗料配合データの充実と情報発信
自動車用塗色を中心に建築用・工業用まで多様化した色彩に対応して、コンピュータ自動調色機や自動塗装機等の機器を活用して膨大な調色配合データを作成・蓄積しています。また、そのデータをさまざまな方法で提供する、調色および色彩にまつわる各種情報の発信基地でもあります。
自動車や大型バス、トラックや企業色の配合データを当社WEBサイトで閲覧できる「配合.jp」の充実や、各自動車メーカー・各車種のボディーカラー等、豊富な実車配合データとカラーチップを掲載した「カラー工房」やオートペイントカラーズを発行しています。
また、「誰でも」「簡単に」「素早く」をコンセプトに、「作業の標準化」「生産性」「人材育成」をサポートできる調色管理測色システム「彩選短スマート」の配合データ蓄積を進めており、時代の変化とともに多様化する意匠性の高い色彩に対して、常に最先端の機能充実を進めています。
彩選短スマート
カラー工房NEO
オートペイントカラーズ2020
ライトスケールRoute
カラーワンダーランド
色彩を感じ、学ぶ空間
イサムは塗料という「モノ」をつくる会社ですが、塗料は原色の色だけでなく、その塗料を塗装したあとの色の見え方が重要です。色の見え方は非常に複雑で、同じものでも見方、見る環境によりその色相は大きく変わります。日常では感覚的には理解ができますが、こうした”色彩”の変化をテクニカルに体験できる施設を滋賀・塗装技術センターに「カラーワンダーランド」と銘打って設置しています。
入口からフロアー全体にデザイン性豊かなクロスを貼り、さまざまなカラーリングを施した77枚のカーシェープを展示し、スポットライトを照射することでフリップフロップ(見る角度により明度が違って見える)による色相変化を確認できます。また、人工光源5種類(太陽光・夕日の光・水銀灯・蛍光灯・LED)を設置し、メタメリズム(光源によって色の見え方が違う)が確認できるようになっており、カラーマッチングの教育施設としても利用しています。